「今から始めても、もう遅いんじゃないか」
NISAの話を見るたびに、私はそう思っていました。自分の年齢から、定年までの期間を計算する。何度やっても、同じ結論でした。
調べても、安心はできません。出てくる言葉はいつも同じです。長期・積立・分散。毎月3万円を30年続ければ…。
その30年が、私たちにはありません。
それでも私は、制度が始まった年に口座を開きました。2018年、42歳のときです。当時、私の周りに投資をしている人は、ほとんどいませんでした。
私は50歳の会社員です。
自分の家計を見直したくてFP(ファイナンシャルプランナー=お金の相談に乗る資格)を取りました。あれから8年、一度も積み立てを止めていません。
この記事では、次の3つを書きます。
- 2つの運用成績 — 2018年から買い付けて8年たった分と、2024年から積み立てている分
- 8年で相場が何回下がったか — そして、戻るまでにどれくらいかかったか
- 50代が20代と変えるべきこと — 私が実際に変えた1つのこと
読み終えたとき、積立額を決める前にやることが分かります。
先に結論です。
遅くありません。ただし、20代と同じ積み方はしないほうがいいと私は考えています。
「もう遅いかも」と思ったのは、42歳のときでした
正直に書きます。
私は「50代から始めた人」ではありません。
つみたてNISAという制度が始まったのは2018年1月です。私が口座を開いたのも、同じ2018年、42歳です。
このころ、つみたてNISAの口座は全国で約104万口座しかありませんでした。 私と同じ40代に限れば、27万口座です。(出典:金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」2018年12月末時点)
周りで投資の話を聞かなかったのは、気のせいではありませんでした。
なので「50代から始めて大丈夫でしたよ」と、自分の体験だけで言うことはできません。
ただ、48歳から始めた分が別にあります。そちらは後で書きます。
調べれば調べるほど「時間が必要」と書いてありました
始める前、私も一通り調べました。そして不安になりました。
出てくる説明は、どれも似ています。
オルカン(全世界の株式に幅広く投資する投資信託)や、S&P500(アメリカの代表的な500社でつくる株価指数)に連動する投資信託は、ある程度の期間をかけて、コツコツ積み立てることが前提だと。
42歳から定年までを数えると、20代の人より期間が短くなります。期間が短ければ、積み立てられる合計額も少なくなります。
「時間が必要」と書いてあるものを、時間が足りない状態で始めるわけです。遅いかもしれない、と思いました。
それでも始めたのは、「まだ何十年かある」と気づいたからでした
背中を押されたのは2つです。
1つは複利でした。
運用で増えた分も、そのまま運用に回り続けます。時間をかけるほど効いてくる仕組みです。
もう1つは、定年までまだ何十年かあると気づいたことでした。40代の頭で「もう遅い」と思っていましたが、数えてみれば20年近くありました。
老後に余裕を持たせたい。少しでもいい。それだけの理由で始めました。
最初に買ったのは、404円分でした
記録が残っています。2017年12月27日、404円。
制度が始まるのは2018年1月からですが、証券会社は年末から申し込みを受け付けていました。年末に申し込んでも、非課税の枠を使うのは年明けからという扱いです。待ちきれずに申し込んだのを覚えています。
なぜ404円という半端な額かというと、毎日積み立てる設定にしていたからです。当時の私はこう考えました。
年間の上限まで使いたい。それに毎日買えば、いちばん本当の平均に近づくんじゃないか。
当時、制度の説明でドルコスト平均法(同じ金額を定期的に買い続ける方法)という言葉自体は知っていました。ただ、なんとなく理解していただけでした。
後から知ったのですが、毎日にしても毎月にしても、結果はほとんど変わらないという試算があります。
15年間の試算では、毎日500円ずつ買った場合と毎月1万円ずつ買った場合で、元本に対する増え方の差は0.3ポイントにも届きませんでした。
(出典:三菱UFJ国際投信作成「毎月・毎日つみたてシミュレーション」2005年3月〜2020年3月・全世界株式指数・税金や手数料は考慮せず)
勘違いでした。ただ、その勘違いで始めた積み立て方が、8年後に効いてくることになります。
ちょきまる毎日積み立てても毎月でも、結果はほとんど変わりません
30年と10年では、どれだけ違うのか
「30年続ければ」と書かれても、自分に当てはまらないと先に進めません。
濁さずに、数字を見てみます。
| 毎月3万円を | 積み立てた元本 | 最終額 | 増えた分 |
|---|---|---|---|
| 30年積み立てると | 1,080万円 | 1,736万円 | +656万円 |
| 10年積み立てると | 360万円 | 418万円 | +58万円 |
(金融庁「つみたてシミュレーター」で2026年9月に試算。想定利回りは年3%)
⚠️3%はあくまで計算上の仮定で、金融庁が保証する数字ではありません。税金や手数料は含まず、実際には値下がりして元本を割ることもあります。
差は大きいです。増えた分だけを比べると、11倍以上違います。
ただ、この表には注意して読んでほしいところが2つあります。
1つめ。元本も3倍違います。
30年のほうは1,080万円を積み立てています。10年の360万円とは、出したお金そのものが違う。
「時間の差だけでこうなった」わけではありません。
2つめ。ここが大事です。
積み立てる期間が10年でも、運用する期間まで10年とは限りません。



「30年ない」のは積み立て期間の話で、運用する時間はもっと残っています。
60歳で積み立てを終えたとして、積み立てたお金を、その日に全部使うでしょうか?
使い始めるのは65歳かもしれませんし、使い切るのは80歳かもしれません。
積み立てが終わっても、運用そのものは続きます。
「30年ない」というのは、積み立てる期間の話です。運用する期間まで10年と決まっているわけではありません。
では、実際はどうだったのか。私の口座を開きます。
8年続けた結果と、2年8か月の結果を公開します
ここからが、この記事でいちばん見てほしい部分です。
私は2018年から今日まで、積み立てを一度も止めていません。途中で制度が変わったので、中身は2つに分かれています。
- 旧つみたてNISA — 2018年から2023年まで買い付け、今も保有中
- 新NISAのつみたて投資枠 — 制度が始まった2024年1月から今日まで積み立て中
金額は出しません。増え方の割合だけ書きます。
| 積み立てた時期 | 経過 | 損益 |
|---|---|---|
| 2018〜2023年(42〜47歳) | 8年経過 | +175% |
| 2024年〜(48歳〜) | 2年8か月 | +30% |
2つを合わせると、積み立てたお金が全体で約2.1倍になっています(2026年9月時点)。
2つの数字は、答えている質問が違います
+175%は「続けたらどうなるか」の数字です。8年かかっています。
+30%は「今から始めたらどうなるか」の数字です。
いま知りたいのは、たぶん下のほうだと思います。
48歳から積み立てた分が、2年8か月で+30%。
明日から始める方の条件に近いのは、こちらです。もちろん同じようになる保証はありません。ただ、2年8か月で、積み立てたお金がここまで増えるという実例にはなります。
私が42歳のときに知りたかったのは、こういう数字でした。
私は2018年から続けているので、まったくの初心者が48歳で始めた場合と、条件がすべて同じではありません。
ただ、2024年以降に入れたお金の増え方は、これから始める方と同じ条件です。値動きに、投資家の経験年数は関係ありません。
途中、何度も相場は下がりました
順調に増え続けたわけではありません。8年の間に、相場は何度も大きく下がりました。
アメリカの代表的な株価指数であるS&P500で、高値から10%以上下がった局面を数えると、5回ありました。
| 時期 | 下がった幅 | 安値をつけてから戻るまで |
|---|---|---|
| 2018年初 | 約10% | 約6か月半 |
| 2018年末 | 約20% | 約4か月 |
| 2020年 新型コロナ | 約34% | 約5か月 |
| 2022年 物価高と利上げ | 約25% | 約15か月 |
| 2025年 関税をめぐる下落 | 約19% | 約2か月半 |
(S&P500の米ドル建て・配当を含まない終値をもとに集計。高値から10%以上下げて、その高値に戻るまでを1つの局面として数えています。期間は、いちばん下がった日から高値に戻るまでを記載しています。出典:FRED(セントルイス連邦準備銀行)が公開するS&P500の日次データ。この5回以外に下落がなかったという意味ではありません)
表の太字の2行を見比べてください。
コロナのときは、3割以上という大きな下落でしたが、5か月ほどで元に戻りました。一方2022年は、下げ幅はコロナより小さいのに、戻るまで1年以上かかっています。
つまり、こういうことです。
早く戻ることもあれば、1年以上かかることもある。どちらが来るかは、起きてみるまで分かりません。
この事実が、次の章につながります。
50代の私が、積立額より先に「現金をいくら残すか」を決めた理由
ここがこの記事の核心です。
暴落は、必ず来ます
8年で5回です。(この記事では、高値から10%以上下がった局面を数えています)
「来るかもしれない」ではなく、「来る」と思っておいたほうがいいというのが、私の実感です。
いつ来るかは分かりません。
どのくらい下がるかも、戻るまでどれだけかかるかも分かりません。分かるのは「また来る」ということだけです。
大事なのは、下がっている最中に積み立てを止めないことです
では、暴落が来たときに何をすればいいか。
私の答えは「何もしない」です。正確に言えば、いつもどおり買い続ける。
理由は、ドルコスト平均法の仕組みにあります。
毎回同じ金額を買うので、価格が安いときには自然とたくさん買えます。安いところで多く買えれば、平均の買値が下がります。
すると、損益がプラスに戻るラインそのものも下がります。元の高値まで戻るのを待たなくてよくなる、ということです。
ただし、平均の買値が下がるのは、追加で買う価格が、それまでの平均より安い場合です。買い続ければ必ず早く回復する、というものではありません。下落が続けば、損失額が膨らむこともあります。
それでも私は、止めるよりは続けるほうがいいと考えています。相場が安いときは、裏を返せば同じお金でたくさん買える時期だからです。
※「まとめて一度に買うほうが有利」という研究もあります。ただしそれはすでに手元に資金がある人の話です。(出典:Vanguard「Cost averaging: Invest now or temporarily hold your cash?」2023年2月/先進国株式・米ドル建て・1976〜2022年で、全額を一度に投資した場合が3回に分けた場合を上回った割合は67.7%)
毎月の給料から積み立てる場合は、そもそもまとめて買うお金が手元にありません。
でも、続けるにはお金が要ります
ここまでは年齢に関係のない話でした。ここからが、50代に効いてくる部分です。
「下がっても止めない」と口で言うのは簡単ですが、実際に止める理由は相場ではなく、生活のほうから来ます。
- 急な出費があった
- 収入が減った
- まとまったお金が必要になった
手元に現金がなければ、投資しているお金を取り崩すしかありません。困ったことに、お金が必要になる場面は、相場が悪いときに重なりやすいのです。
いちばん安いときに売る。ドルコスト平均法の逆をやることになります。
ここが大事だと私は考えています。問題は年齢そのものではなく、「投資しているお金を、いつ使うか」です。
使う時期が遠ければ、暴落が来ても待てます。近ければ、待てません。
20代でも、3年後に使う予定のお金なら待てません。
50代でも、80歳まで手をつけないお金なら待てます。
ただ、50代は「使う時期」が近づいてくる年代です。定年後は収入の形が変わりますし、お金を使い始める時期そのものが視界に入ってきます。だから、若い頃と同じ感覚のままだと危ないと思っています。
そこで私は、積立額を決める前に、現金をいくら残すかを先に決めました。
現金は、損を避けるために持つのではありません。下がっている最中も買い続けるために持つのです。
順番が逆になると、うまくいきません。
「いくら積み立てられるか」から考えると、手元が薄くなり、いちばん売りたくないときに売ることになります。



積立額より先に、現金をいくら残すかを決める!
「積み立てるな」という意味ではありません
誤解のないように書いておきます。積立額を減らせと言っているのではありません。
収入に余裕があるなら、私はむしろ増やしたいと思っています。問題は金額ではなく、決める順番です。
- 生活費と、急な出費に備える現金をいくら持つか
- 残ったお金から、毎月いくら積み立てるか
この順番で決めれば、暴落が来ても慌てずに済みます。
無理に続けることをすすめているわけでもありません
もう1つ、大事なことを書きます。
家計が苦しくなったら、積み立てを減らすのも、しばらく休むのも、立派な選択です。
生活を削ってまで続けるものではありません。
私が言いたいのは逆のことです。生活を削る事態にならないよう、先に現金を決めておきませんかということです。
商品は、オルカンかS&P500で十分だと私は考えています
「何を買えばいいか」も迷うところだと思います。私が積み立てているのは、オルカン(全世界株式)とS&P500に連動する投資信託です。
世界やアメリカの成長に乗る、という考え方です
インデックス投資(市場全体に幅広く分散して投資する方法)は、個別の会社を当てにいく投資ではありません。
世界経済やアメリカ経済が、長い目で見て成長するほうに乗る投資です。
だから、やることは淡々と積み上げることだけになります。
個別株も持っています。そのうえでインデックスをすすめます
実は私、インデックス投資だけをやっているわけではありません。配当を目的にした個別株も、93銘柄持っています。
ただ、正直に書きます。
この93銘柄は、私が自分で分析して選んだものではありません。
参加しているコミュニティで紹介されていたものを、そのまま買っているだけです。
つまり私は、個別株を持っていても、分析はしていないわけです。
そのうえで、50代の方にまずすすめたいのはインデックス投資のほうです。
理由は、個別株は、調べる時間がかかるからです。
銘柄を調べて、決算を読んで、売買のタイミングを計る。買ったあとも、常に相場を気にしていないといけません。
ただ、私はそこまで分析に興味を持てませんでした。
時間がなかった、というのとは少し違います。
その時間を分析に使うのが、もったいないと感じたんです。
50代は仕事も家庭も忙しい時期です。
同じ時間があるなら、他のことに使いたい。
インデックス投資は、そこが違います。
- 少額から幅広く分散できる
- 手数料が圧倒的に安い
- 買ったあとは放っておける
オルカンなら、1本買うだけで2,409銘柄に分散されます(2026年8月末時点)。手数料は、長く持つほど差が効いてきます。そして買ったあとは、毎日値段を見る必要がありません。
「相場を気にしない時間」が手に入る。
50代にとっては、これがいちばん大きいと思っています。
過去の実績でも、悪くない結果が出ています
「プロが運用する商品のほうが成績はいいのでは」と思う方もいるかもしれません。
参考になる調査があります。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が公表している調査によると、
2025年末までの10年間で、日本で販売されている米国株式のアクティブファンド(運用のプロが銘柄を選ぶ商品)の97.65%が、S&P500を下回っていました。(出典:S&P Dow Jones Indices「SPIVA Japan Year-End 2025」9ページ・2026年3月公表/運用費用を差し引いた後の成績で比較)
⚠️これはあくまで過去の、特定の期間と分類での比較です。
これからも同じ結果になるとは限りませんし、指数そのものを買うことはできません。(実際のインデックスファンドにも手数料はかかります)
それでも、「プロに任せたほうが安心」と考えて手数料の高い商品を選ぶ前に、知っておいて損はない数字だと思います。
取り崩し方と、避けたほうがいい商品は、別の記事で書きます
この記事では書ききれなかった、大事な話が2つあります。
- どうやって取り崩すか
- どの商品を避けるか
取り崩し方は、お金を使う時期が近づくほど、考える必要が出てきます。
私自身、定年が視界に入ってから意識するようになりました。
「4%ルール」と呼ばれる、研究から生まれた目安があります。(⚠️過去のデータに基づく目安であって、将来を保証するものではありません)
避けたい商品については、窓口ですすめられるものの中に、手数料が高いものがあります。
どちらも、この記事に入れると長くなりすぎます。それぞれ別の記事で書きます。
まとめ|50代からのNISAは遅くない。ただし順番を変えてください
長くなったので、3つにまとめます。
- 50代から始めても遅くはない
- 20代とは決める順番が違う
- 選ぶ商品はシンプルで大丈夫
1つめ。
48歳から積み立てた分は、2年8か月で+30%でした。しかも、積み立てる期間が10年でも、運用する期間まで10年とは限りません(⚠️相場次第で減ることもあります。+30%は私の期間の結果で、約束ではありません)。
2つめ。
「いくら積み立てるか」より先に「いくら現金で持つか」を決めてください。現金は、損を避けるためではなく、下がっている最中も買い続けるためにあります。
3つめ。
オルカンかS&P500に連動する投資信託を淡々と。分析に時間を使いたくない人ほど、向いています。
8年の間に、相場は5回大きく下がりました。
早く戻った年もあれば、1年以上かかった年もあります。5回とも、私は何もせずに通り過ぎました。
何もできなかったのではなく、何もしなくていいように、手元に残す現金を先に決めていたからです。
今日の一歩|まず、現金がいくらあるか確認する
まず、生活費の何か月分を現金で持っているか、確認してみてください。
積立額を決めるのは、そのあとです。
順番を変えるだけで、続けられる確率がぐっと上がります。
「スマホ代を見直して浮いたお金が、そのまま積立の原資になります。私が実際にいくら浮かせたかは、こちらに書いています。」


「動いたほうがいいと分かっているのに動けない…という状態は、投資でも固定費の見直しでも同じでした。1年悩んだときの話です。」



